この書籍「21 Lessons」は、イスラエルの歴史学者、 ユヴァル・ノア・ハラリ博士の著書です。日本語版は、2019年11月に発売されました。
以下、特にマインドフルネスの観点から、自分なりに要約したです。
博士のこれまでの著作、「サピエンス全史」と「ホモ・デウス」も翻訳されて、ベストセラーとなりました。
- 「サピエンス全史」では、これまで、人類(ホモ・サピエンス)がどの様に進化し、繁栄するようになったのかを振り返りました。もともと、少人数で狩猟採集生活をしていたホモ・サピエンスが、神や貨幣、会社、国家といった空想上の概念を共有することによって、大掛かりな社会を作り出し、地球の気候を変えてしまうまでになりました。
- 「ホモ・デウス」では、 人工知能や生物工学が発達し、進化の道筋から離れていく人類の未来を予想しました。一部のエリートは全能の神(デウス)の様になる一方で、多くの人が仕事を失い「無用者階級」となる、暗い未来が予想されています。
今回の著作「21 Lessons」は、現代の社会の諸問題についての考察です。「雇用」、「ナショナリズム」、「宗教」、「ポスト真実」など、21の項目に分けて、強烈な批判や皮肉を交えて考察されています。
博士によると、人類の生存に関わる大きな問題は以下の3つあります。
- 核戦争の脅威
- 気候変動の脅威
- 技術の進歩による脅威(デジタル独裁国家や無用者階級の出現)
これらの新しい問題は、 「宗教」や「ナショナリズム」 では解決できず、問題をかえって悪化させることになる、と博士は指摘します。「自由主義」や「共産主義」といった概念でも解決できません。新しい概念に基づくグローバルなコミュニティの構築が必要です。
しかし、どのような形でグローバルなコミュニティが作られていくのか、合意できる見込みはありません。
それでは、この不安な世界を心安らかに生きていくには、どうすればよいでしょうか? 博士はいくつかの提案をしています。たとえば、
- 自分が無知であること、間違っているかもしれないことを認めること。
- 真実と信念を区別すること。真実は観察と証拠に基づいている。
このために、博士は、瞑想を実践しているそうです。この本の最後は「瞑想」の章で終わっています。
博士は、毎日2時間の瞑想を実践し、毎年1-2か月、瞑想修行に行くそうです。
博士が実践しているのは、ゴエンカ氏が始めた「ヴィパッサナー瞑想」です。マインドフルネス瞑想の一種です。
ヴィパッサナー瞑想では、他のマインドフルネス瞑想と同じように、「この瞬間の現実をひたすら観察」します。
例えば、今起こっている「呼吸」の感覚や体の感覚をありのままに観察します。
怒りとは何か、知りたいだろうか? それならば、腹が立っている時に体の中で起こって消えていく感覚をただ観察すればいい。
「21 Lessons」 ユヴァル・ノア・ハラリ
瞑想を実践することによって、真実とは何かを体感することができます。
博士は、瞑想の実践のおかげで、集中力と明晰さを得て、「サピエンス全史」や「ホモ・デウス」も書けたそうです。
「サピエンス全史」では、「神も貨幣も会社も、空想上の概念だ」と看破し、「ホモ・デウス」では、「人間はアルゴリズムだ」、つまり、入力があって出力があるだけで、自由意志など幻想である旨、書かれていました。これも、瞑想の実践から出てきたものだったのですね。
ただし、博士は、「瞑想は誰にでも効く万能薬ではない」と言っています。
また、こうも言っています。「世の中を変えるためには、行動を起こす必要があり、団結する必要がある。もし本当に気にかけていることがあれば、それに関連した組織に加わることだ。今週中にもそうしてほしい。」
私としては、まず、マインドフルネス瞑想の実践を通じて、真実を理解する能力を少しでも高めたいと思います。
さて、人類の滅亡を防ぐために自分にできることは何でしょうか?
ハラリ博士は、気になることがあれば関連した団体に今週中に所属してほしい、と言っていますが、自分には世の中は複雑すぎて、どんな団体の活動が役に立つのか、自分はどんな役に立つのか、わかりません。
せめて、選挙での投票を通じて、3つの脅威(核戦争、気候変動、技術の進歩)に対応するのに最も適切に思える人を選ぶ、ということをしたいと思います。
ハラリ博士は、この本の中で、Facebook によるグローバルコミュニティ構築の取り組みについて触れられています。確かに、これまでになかった素晴らしい取り組みですが、営利企業の罠にはまってしまうようで躊躇してしまいます。
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