ボディスキャンとは、身体の各部分の感覚をありのままに観察していく、マインドフルネス瞑想の一つの方法です。MBSR(マインドフルネスストレス低減法)では、このボディスキャンを最初の週に練習します。
ボディスキャンの音声ガイダンス(45分):
この記事では、ボディスキャンの目的や方法を説明します。
ボディスキャンの目的
マインドフルネスとは、「今、この瞬間に起こっていることに気がつく」ということですが、自分の体の感覚は、まさに今起こっていることです。
ボディスキャンでは、静止した状態の体の感覚を観察することによって、「今、この瞬間」に起こっていることに注意を向けます。すなわち、マインドフルネスの実践を行います。
ボディスキャンには、マインドフルネスの実践以外に、次のような目的もあります。
- 自分の身体の感覚を向上させ、自分の体に親しみ、やさしい気持ち、好奇心を持つこと。
- さまざまなマインドフルネス瞑想のために必要な集中力や忍耐力を養うこと。
- 意識を身体の一点に集中させたり、身体全体に広げたりといった意識のコントロールや柔軟性を養うこと。
- 自分の感情や思考を観察するための手がかりとして、体の感覚を感じること。
ボディスキャンは、他のマインドフルネス瞑想の習得やストレスの低減のための基盤となります。MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の8週間のコースでは、まず、ボディスキャンを毎日、45分間、自宅で練習します。
45分は長すぎると感じる人が多いと思います。ボディスキャンは短時間でもそれなりの効果がありますが、45分間集中して実践することによって、心がさらに落ち着いて、体の感覚を深く感じ、リラックスすることができます。
ただし、このような効果を得ようと期待して実践すると、そのような願望が体の感覚に意識を向ける妨げとなることがあります。思考や感情が体の感覚の観察を妨げている事に気がついて、体の感覚の観察に戻る、ということも、ボディスキャンの実践の一部です。
ボディスキャンのやり方
場所と時間の確保
ボディスキャンを実践するには、まず、自分一人だけになれて、邪魔が入らない場所と時間を用意します。
仰向けで横になった状態で実践するのが一般的ですが、眠ってしまうという場合は、椅子に座った状態で、あるいはそれ以外の自分に合った体勢で実践するといいでしょう。
仰向けで横になる場合は、布団やベッドのように柔らかすぎると寝てしまうので、カーペットの床やヨガマット、毛布の上で横になるのがいいでしょう。必要に応じて、頭の下や膝の下にクッションやまくらを置きます。寒いときには、毛布など使うといいでしょう。
音声ガイダンス
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の講師の音声ガイダンスを聞きながら実践することをおすすめします。
音声ガイダンス、以下のとおりです。
慣れてきたら、音声ガイダンスなしで、自分のペースでボディスキャンをしてみてもいいでしょう。

ボディスキャンの順番
MBSR(マインドフルネスストレス低減法) の講師によって違いはありますが、45分間のボディスキャンは、概ね次の順序で行われます。
- 呼吸の観察。
- 意識を左足の足先に向けて、その後、足の裏、足の甲、脛、ふくらはぎ、膝、太ももをそれぞれ観察。
- 意識を右足の足先に移動させて、左足と同様に右足の各部分と右足全体を観察。
- 胴体の各部分と胴体全体を観察。
- 両手の各部分と両手の全体を観察。
- 頭部の各部分と頭部全体を観察。
- 身体全体を観察。
ありのままの感覚を観察
身体の各部分を観察しようとするときに、感覚があいまいだったり、何も感じない部分があったりするかもしれません。そのようなときは、あいまいな感覚や、「何も感じない」ということをありのままに観察します。
感覚を得るために無理に身体を動かしてみる必要はありません。
「もっと鋭い身体感覚を得たい」とか、「何も感覚がないのは許せない」という気持ちが心に現れたら、そのような思考や感情が心に現れていることを、ありのままに観察します。そして、そのような思考や感情があることを認めた上で、それには反応しないようにして、体の感覚に意識を戻していきます。
ボディスキャン中の眠気や考え事への対処方法
ボディスキャンをやっていると、途中で寝てしまったり、考え事をしてしまったりすることがよくあります。
眠気や考え事のようなボディスキャンを妨げているものに気がついて意識を体の感覚に戻す、ということもボディスキャンの練習の一部です。ですから、うまくボディスキャンがうまくできなくても、問題ありません。気がついたところから、音声ガイダンスに従って、ボディスキャンを再開します。
ボディスキャン中の眠気や考え事への対処として、次の方法を試してみましょう。
自分の体の各部分に対して、優しい気持ちと好奇心を持って観察する
「自分の体に優しい気持ちをもつ」なんて、奇妙な感じですが、自分自身を客観的に見つめるための有効な方法です。「自分の心」に対して優しい気持ちを持つことにも繋がります。
「自分に優しい」というと、欲望に身を委ねる、あるいは、努力を怠るのを許す、という意味にも取れますが、そういうことではありません。自分の親しい人、家族や友人に対して優しい気持ちを持つように自分自身の体に対して、優しい気持ちを持ちます。
自分の体の各部分はこれまで人生を一緒に過ごしてきた仲間だと思って、体の各部分が発しているメッセージに耳を傾けてあげましょう。
自分の体の感覚への興味が薄れると、どうしても、眠くなったり、考え事が起こったりしてしまうのです。
何が自分の瞑想を妨げているのかに気がつく
ボディスキャンを含めて、マインドフルネス瞑想を妨げるのは、次の5つのうちのどれかです。
- 欲望(なにかもっと楽しいことをしたいと望む気持ち)
- 嫌悪(いやなことから逃れたいという気持ち)
- 眠気(疲れから眠ってしまいたいという気持ち)
- 落ち着きの無さ(退屈して目新しいものを探したいという気持ち)
- 疑い(この瞑想の方法が正しいのか、という疑い)
このうち何が自分の瞑想を妨げているのかに気がついて、そのような心の動きがあることを受け入れて、客観的に観察することによって、自分から切り離していきます。
詳しくは、マインドフルネス瞑想を妨げるものに関する記事をご参照ください。
ゲーム感覚で試してみる
ゲームが好きな人はボディスキャンをゲーム感覚で試してみてもいいでしょう。
ボディスキャンは、自分の意識を自分の体に向け続けるゲームだと考えます。
意識を体に向けていると様々な邪魔が入ります。たとえば、様々な欲望や嫌悪からくる考え事、眠気、イライラ、退屈、こんなやり方でいいのかという疑問などです。このように邪魔をするものは、敵キャラだと考えてうまくやり過ごして、意識を体に向け続けます。途中で寝てしまったり、考え事をして意識が体から離れたりしてしまったら、そこでゲームオーバーとなり、気がついたところからまたゲームが始まります。
毎日、ボディスキャンを続けていると、体に意識を合わせ続けるコツがだんだんとわかってきます。前回寝落ちしまったところよりも、少しでも先に進むようにしてみましょう。
ボディスキャンを最後まで続けると、とても気持ちいいです。ただし、気持ちよくなることを目的にボディスキャンをすると、その願望や欲望が様々な考えを引き起こしてボディスキャンを邪魔することがあります。このような敵キャラの罠にはまらないように気をつけましょう。
それでも寝てしまう場合
どうしても眠くなるという方は、座った姿勢や立った姿勢で試してみたり、目を開けた状態で試してみましょう。睡眠時間がそもそも足りていない方は、生活を見直すことも検討してみましょう。
それでもボディスキャンはどうしてもできないという方は、マインドフルネスヨガを代わりに試してみてもいいでしょう。マインドフルネスヨガは、ヨガのポーズを取りながら体の感覚を観察するので、ボディスキャンよりも眠くなりにくく、考え事も起こりにくく、体の感覚も感じやすいです。
まとめ
ボディスキャンは、自分の身体の各部分を観察して、それをありのままに受け入れ、自分自身に対する優しい気持ちを育てるために行います。
ボディスキャンは、他の各種マインドフルネス瞑想の実践の基盤となるものです。ただし、一人で独習するのは難しいかもしれません。
ボディスキャンを含めて、マインドフルネスの実践方法を学ぶには、 MBSR(マインドフルネスストレス低減法) の8週間のコースに参加されることをお勧めします。
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)のコースの参加方法は下のリンクをご参照ください。
