「共感疲労」を「思いやり(コンパッション)」で克服する

empathyサーチ・インサイド・ユアセルフ

この記事では、共感疲労を思いやり(コンパッション)で克服できないか、ということに関する研究をご紹介します。

「共感」とは、他の人が感じている感情を理解する、ということです。この時、相手の人と同じ感情が頭の中で働いているそうです。人間は、相手の感情を自分の脳でシミュレーションすることによって、人と人の繋がりを感じる、という能力を、進化の歴史の中で身に着けたのですね。

つらい思いをしている人に共感する、ということを続けていると、「共感疲労」を起こすことがあるそうです。

「共感疲労」とは、他の人のつらい思いを自分のことのように感じることで、その苦痛が自分にとってのストレス、心労になることです。結果として、心を閉ざしたり、健康を害したりすることもあるそうです。医療や介護の現場、震災ボランティアにも、この共感疲労が起こることがあるといいます。

ジュネーブ大学の Klimecki 博士らは、この共感疲労を思いやり(コンパッション)で克服できるのではないか、と考えて、実験を行いました。

ここでいう「思いやり(コンパッション)」とは、その苦しみを感じることに加えて、苦しんでいる人の幸せを願い、その人を助けてあげたいというモチベーションを持つことです。

「共感疲労」を起こす人は、他の人の苦しみがわかる、心優しい人なので、「思いやりがない」わけではありません。だから、「コンパッション」を「思いやり」と訳すのは不都合なのですが、他に適切な訳語がないので、この記事では、「思いやり(コンパッション)」としておきます。気を悪くされた方がいたら、ごめんなさい。

実験の方法

実験の参加者を次の2つのグループに分けます。

  1. グループA
    • 参加人数 25人
    • 共感力を高めるための瞑想トレーニングを行い、その後、思いやり(コンパッション)を高めるための瞑想トレーニングを行います。
  2. グループB (比較グループ)
    • 参加人数 28人
    • グループAと同じ時間、記憶力を高めるためのトレーニングを2回行います。

グループA、グループBともに、トレーニングの前、トレーニングの間、トレーニングの後の合計3回、以下の項目について計測します。

計測内容:

  • 病気や災害で苦しむ人のビデオを見てもらって、その間の脳のMRI画像を撮影する。さらに、共感の度合い、ポジティブ感情、ネガティブ感情の度合いを記録してもらう。ビデオの内容は毎回異なるものを使用する。
  • コンピュータを使った記憶力のテストを受けてもらう。

実験の結果

この実験の結果わかったことは、

  • 共感力を訓練した後、苦しむ人のビデオを見ると、
    • 苦しみへの共感が高まるとともに、ネガティブな感情が起こっている。
    • 脳の「痛みの共感」「ネガティブな感情」に関わる部分が活性化している。
  • 思いやり(コンパッション)を訓練した後、苦しむ人のビデオを見ると、
    • ネガティブな感情は緩和され、ポジティブな感情が増える。
    • 脳の「ポジティブな感情」「人とのつながり」「報酬」といったことに関わる部分が活性化している。

思いやり(コンパッション)のトレーニングを受けた後は、辛い人の映像を見ているのに、現実から目をそむけているわけではないのに、ポジティブな感情が起こってくるのは、特筆するべきことだ、と研究者は報告しています。

しかも、その変化は、MRIを使った脳の画像からも証明されています。

したがって、「思いやり(コンパッション)が共感疲労を克服する可能性がある」と研究者は結論づけています。

どうやって思いやり(コンパッション)をトレーニングするか

この実験では、思いやり(コンパッション)をトレーニングするための方法として、瞑想が取り入られています。書かれている内容から、おそらく、慈悲の瞑想ではないか、と思います。この慈悲の瞑想を生活に取り入れてみるのが一つの方法です。

グーグルで開発された人材育成プログラム「サーチ・インサイド・ユアセルフ」では、リーダーシップのために大切なスキルとして、思いやり(コンパッション)を学びます。そこで思いやりを育てる方法として推奨されているのは、

「困難な状況にある人を見つけたら、その人のために自分は何をしてあげることができるかを考える」

ということです。

これも実際的な思いやり(コンパッション)のトレーニング方法として有効だと思います。

実際にその行動をとるかどうかは別にして、職場や家庭、路上などで困難な目にあっている人を見るたびにこの練習をしていると、次第にそれが習慣となり、実際に行動する勇気が出てきます。


出典: 

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