この記事は、Google で開発した人材開発プログラム SIY (サーチ・インサイド・ユアセルフ)で学ぶリーダーシップのために大切な2つのスキルのうちの一つ、「思いやり (コンパッション)」について解説するものです。
リーダーシップを身に着けたい、職場での影響力を高めたい、その方法を知りたい方にとって、役に立つ情報です。
思いやり(コンパッション)とは
SIY では、リーダーシップのために大切な2つのスキルのうちの一つとして、次のことを学びます。
チーム内で困難な状況にある人に対して、思いやり(コンパッション)を持って接する
この「思いやり(コンパッション)」とは、相手の困難な状況を理解し、その人の幸せを願い、その人のために自分ができることは何か、考えるということです。
「その人のために自分ができること」は、その人との関係とかチームの雰囲気など、状況によって異なります。例を挙げると、以下のようなものがあります。
- その人のために問題を解決してあげる
- 問題を解決できる人を紹介してあげる
- その人の話を聞いてあげる
- その人の味方になってあげる
自分にはできないことを無理してやることはありませんし、自分がやったことをことさらにアピールする必要もありません。
この「思いやり(コンパッション)」に関して、以前、私が勤めていた職場にいたMさんのことを思い出します。
Mさんはチームのリーダーではありませんでしたが、チーム内では年長者で、皆に慕われていて影響力のある人でした。
Mさんは、毎日、グループのメンバーの様子を良く観察して、調子の悪そうな人がいないか見ていました。
ある時、仕事で失敗して1人で落ち込んでいる新入社員(Aさん)を見かけたMさんは、同じグループの中堅社員(Bさん)に次のように声をかけていました。
Mさん: 「Bさん、新入社員のAさんは調子悪そうだけど、何か知ってる?」
Bさん: 「ああ、Aさんは先日ミスをして、それで落ち込んでいるんですよ。」
Mさん:「Bさん、悪いんだけど、Aさんに声をかけて、相談に乗ってあげてくれないかな?」
Bさん: 「はい、いいですよ。」

このMさんの小さな行動は、職場でさまざまな良い効果を生みます。
- まず、新入社員のAさん。中堅社員のBさんから声をかけてもらって救われた思いをします。
- それから、中堅社員のBさん。仕事は少し増えてしまいますが、悪い思いはしません。自分がMさんから信頼されているのがわかるし、このような形でチームに貢献できるのは Bさんにとって嬉しいことです。
- さらに、私のような他のチームメンバー。新入社員のAさんが助けてもらっているのを見て、「このチームでは失敗しても助けてもらえるんだ」と思って安心します。私もBさんのようにチームに貢献できる様になりたいと思います。チームの心理的な安全性が高まり、チームのパフォーマンスにも良い影響があります。
実は、この出来事で最も得をしたのは、Mさんでした。
この小さな出来事の結果、Mさんのチーム内の影響力は向上します。Mさんは自分がAさんを助けたことを皆に宣伝する必要はありません。こういうことを続けているうちに、自然とチームのみんながMさんに好感を持ち、尊敬するようになります。その結果、Mさんはチームで他の人を説得したり、仕事を頼んだりということが、やりやすくなるのです。
「チームの中で困った人を見つけて、自分に何ができるか考えてあげる」ということは、Mさんにとって、チーム内で影響力、リーダーシップを高めるための機会だったのです。
まさに、「情けは人の為ならず」ですね。
SIY では、この思いやり(コンパッション)のスキルを日常生活で向上させる練習方法として、
「 日常生活で、 困っている人を見たら、自分がその人のために何ができるか考える」
ということを推奨します。
思いついた方法を実行しないといけない、というわけではありません。ただ、考えてみるだけでよいのです。これを繰り返しているうちに、実際の行動に結びつくケースも出てくるはずです。
「困難な状況にある人に共感するだけではなくて、どうやったら助けてあげられるか考える」ということは、自分の健康にとっても良いことです。詳しくは、下の記事をご参照ください。
まとめ
チームでのリーダーシップを高めるための方法の一つは、「チームで困っている人に思いやりを持って接する」ということです。
ここでいる思いやり(コンパッション)とは、その人の状態を理解し、その人の幸せを願い、その人のために何ができるのかを考えるということです。
SIY では、グループでの実践を通じて、コンパッションを学びます。
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