進化心理学とマインドフルネス

マインドフルネス

先日、石原幹人博士による著書「生きづらさはどこから来るか 進化心理学で考える」という本を読みました。

この本は、進化心理学の観点から、なぜ私達が生きづらさを感じるのか、そのように対処すればよいか、といったことをわかりやすく解説しています。

進化心理学とは、人間の心の仕組みを進化の過程から説明しようとする学問です。この本はマインドフルネスについてはひとことも触れていませんが、マインドフルネスを実践するためにとても役に立つと思いました。

というのも、進化心理学は、人間の思考や感情を、進化の過程でどのように発達したのか科学的に説明してくれます。マインドフルネスの実践では、自分の思考や感情をありのままに観察して受け入れる、ということをやりますが、進化心理学の知識がこのようなマインドフルネスの実践に役にたつのです。

以下、この本の概要、自分の観点から解説します。

進化とは何か?

博士は、進化論の本質は、次のようにエレガントに表現できる、としています。

地球上のすべての生命は、遺伝子の歴史をつうじてつながっている

生きづらさはどこから来るか 進化心理学で考える

地球上のすべての生命は、人間も、猿も、昆虫も、植物も、細菌も含めて、共通の祖先から遺伝子を受け継いでおり、その意味でつながっているということです。すべての生き物は私の親戚です。私は、地球の生命の一部と見ることもできます。

博士によると、進化のルールは次にように実にシンプルであるとのことです。

生き残ったものが生き残る

生きづらさはどこから来るか 進化心理学で考える

ランダムに突然変異する遺伝子のうち、その環境に適した遺伝子を持つ個体だけが生き残り、残りの個体は死に絶える、ということをとても多くの世代で繰り返すことによって、目や脳といった複雑な器官が徐々に発達していったのです。

博士によると、これまでの人間の進化の歴史は簡単にいると次のとおりです。

  • 700万年前 人間とチンパンジーの共通の祖先が出現
  • 500万年前 類人猿(人のような猿)出現
  • 300万年前 人類(ホモ属)出現
  • 1万年前 人類の定住、農業が始まる

1万年前に農業が起こり、定住生活を始めるまで何百万年もの間、私達の祖先は、100人程度の集団で移動しながら狩猟採集生活をしていました。このような生活に合わせて人の心と体は進化したのです。

狩猟採集生活

定住生活や農業が始まってからの1万年の間にも進化は少しずつ起きていますが、1万年は進化の観点からは短すぎて、私達の心も体も、この間、ほとんど変わっていないそうです。

博士は、人間の生きづらさの原因の一つとして、狩猟採集生活に合わせて発達した人間の心と、現代社会との間にギャップがあることを挙げています。

現代のオフィス

狩猟採集生活に合わせて発達した私達の心と現代生活のギャップ

100人程度の集団による狩猟採集生活に合わせて進化した人間の心の例、以下のとおりです。

  • コミュニケーションが必要なのは集団内の100人程度に限られる。(多くの情報を取捨選択する能力は進化しなかった。)
  • 草原での猛獣との戦いに生き残るため、集団生活を行うことは必須だった。(集団に属して、承認されたいという欲求が生まれた。)

ところが、現代社会では随分と事情が変わってしまいました。次のようなギャップが生じます。

  • さまざまな情報が溢れ、何が正しいのか判断するのが難しい。(情報過多がストレスになる。)
  • お金さえあれば、集団生活で協力しなくても生きていける。(それでも承認されたいという欲求は残る。)

他にも、この書籍では、現代社会で生きづらさを感じることの原因として、さまざまな状況を狩猟採集生活の環境とのギャップとして説明されています。

自分の欲望や葛藤をありのままに、マインドフルに受け入れるために、このような知識が役に立ちます。

負の感情ができた訳

博士は、「怒り」のような負の感情が、進化心理学の観点からどのように発達したのかを書籍の中で説明しています。

怒り博士によると、「怒り」の感情は、他の動物と同じように、「強いオスがメスと生殖できる」という繁殖のメカニズムに由来します。
オスたちは、他のオスと戦ったり威嚇したりすることによってグループの中の階級順位を決めます。これが「怒り」の感情の起源だそうです。
おびえ下位の階級の個体は上位の個体に対して、下手に出た方が遺伝子を残すのに有利になることがあります。そこから、「おびえる」とか「下手に出る」という行動が進化したとのことです。
同情・信頼「同情」したり「信頼」しあったりすることで、上位の個体を共同して倒そうとする感情も進化しました。
裏切り上位の個体に取り入って得をしようとすると、他の個体からは、「裏切り」と見られるようになりました。
憤り裏切り者を集団から排除しようとする感情「憤り」もここから進化します。
評判裏切り者の渡り歩きを防ぐために、「評判」を重視しようとする感情も生まれました。

他にも、男女の性戦略の違いによる感情の違い、親子の対立なども、進化心理学の観点から説明できるそうです。

まとめ

進化心理学は、人間の心理を進化の歴史の観点から説明しようとする学問です。

この石原幹人博士による著書「生きづらさはどこから来るか 進化心理学で考える」は、進化の仕組みや、感情がどのように進化したのか、をわかりやすく説明してくれます。

このような理解がマインドフルネスの実践に役に立ちます。自分の欲求や感情について、科学的な理解が得られるからです。自分の欲求や感情に振り回されることなく、観察するというマインドフルネスの実践に役にたつのです。

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