G-LWGX0D5F1Z 人間関係の改善にマインドフルネスが役に立つか?

人間関係の改善にマインドフルネスが役に立つか?

マインドフルネス

人間関係がストレスの原因だという人は多いことでしょう。ここでは、マインドフルネスがどのように人間関係の改善に役立つか、説明します。

なぜ人間関係がストレスの原因になるのか?

世界で最初に農業が始まるのは1万2千年ぐらい前です。私たちは、それまで何万年もの間、集団で狩猟採集生活をしていました。

狩猟採集生活の集団の人数は、だいたい数十人、多くても数百人で、ほとんどの人が生涯を通じての友人か親族でした。

毎日同じ仲間と狩りや採集をして、一緒に火を囲んで食事します。子供は集団で世話をして、集団の中で育ちます。私たちは、そのような社会に適応してきました。私たちの身体と心は、そのころとほとんど変わっていないそうです。

ところが、ここ数千年の間に、社会は大きく変化しました。現代の社会では、生涯を通じて、何千人、何万人という人と出会います。

現代の社会は非常に複雑で、生きていくためには、様々な人間関係を保つことが求められます。その一方で、個々の人間関係は希薄になっていっています。

狩猟採集生活に適応した私たちの身体や心は、現代の社会では人間関係から大きなストレスを受けるのです。これはすべての現代人にとって、共通の悩みだといえるでしょう。

人間関係のストレスを軽減するためには?

それでは、どのようにすれば、人間関係のストレスを軽減できるでしょうか? マインドフルネスが役に立ちます。具体的な方法を見ていきましょう。

マインドフルに話を聞く

MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の8週間のコースでは、マインドフルに相手の話を聞く練習をします。たとえば、2分間、相手の話を聞くことに集中します。基本的に口を挟まず、相手の表情や身振りにも注意を向けます。

人の話を聞いているとき、話を聞きながら、相手の話していることが正しいかどうか判断していたり、どんな返事をするか、どんなアドバイスをするかを考えていたりすることがあります。

マインドフルに聞く練習をするときには、そのようなことを一切考えずに相手の言っていることを理解することに全力を尽くします。「傾聴」とほぼ同じ意味だと思います。

この練習をしたとき、私は、普段、相手の話を聞いていないことを痛感しましたが、もっと印象に残ったことは、自分の話をマインドフルに聞いてもらったときのことです。

次のような感想を持ちました。

  • 相手が自分の話を真剣に聞いているかどうかは、すぐにわかる。
  • 自分の話を真剣に聞いてもらうだけで、とてもうれしい気持ちになる。

人間関係の改善の第一歩は、まず、自分の考えを横に置いておいて、相手の話を真剣に聞くことだと思います。これはいつでも始めることができます。

次のようなテクニックが自然に使えるようになると、なお良いでしょう。

  • 相手の話に相槌を打つ
  • 時々目を合わせて話を聞いていることを知らせる
  • 話を聞いていることがわかるような質問をする

ただし、そんなことに気を遣うよりも、単に相手の話を理解することに全力を挙げることの方が重要だと思います。真剣に相手の話を聞いていれば、そのことは伝わりますし、自然と上に挙げたようなことをすることになります。

自分の考えや感情に気づく

マインドフルに話を聞こうとするとき、仲のいい人とか、あまりよく知らない人が相手の場合は比較的簡単にできても、苦手な人を相手にすると、難しいかもしれません。話を聞いている間に、ネガティブな考え、感情が次から次へと浮かんでくるからです。

そういう時には、自分の心に浮かんでくる考えや感情を観察してみるといいでしょう。

ネガティブな考えや感情が心に浮かんで来ることに気が付いても、そのことを否定したり、正当化したり、あるいは、自分を責めたりする必要はありません。

できれば、自分のそのような心をやさしい気持ちと好奇心を持って、心の中の現象として、ありのままに観察しましょう。

人間関係がうまくいかない原因は、相手にあることもありますが、自分の心に無意識のうちに巻き起こる考えや感情にもあるのかもしれません。そのことを観察できるようになれば、自分の対応を変えるきっかけになるかもしれません。

人間関係の目的に沿った対応を考える

苦手な人への対応は、その時の自分の無意識な感情に沿ったものになりやすいです。例えば、怒りに駆られている時は、仕返しをしたいと思うかもしれません。相手のことを軽蔑している時には、大事な話でも無視してしまうかもしれません。

もし、苦手な相手に対する自分の考えや感情を意識的に観察することができれば、別の観点から対応方法を考えてみてはどうでしょう。自分の感情は感情としてこれを認めたうえで、その苦手な人との人間関係の目的に照らして一番適切な方法を検討してはどうでしょうか?

たとえば、次のように人間関係の目的と、それに適した対応方法を考えてみましょう。

  • 同僚との関係が自分の仕事の評価のためにあるとしたら、仕事の評価を上げるためには、同僚との関係はどうあるべきか?
  • 妻との関係が自分の人生を豊かにするためにあるとしたら、自分の人生を豊かにするためには、妻との関係はどうあるべきか?

それでもダメな場合は?

残念ながら、人間関係はいつでも改善できるとは限りません。相手のあることだからです。

マインドフルに話を聞いて、自分の無意識の考えや感情に気が付いたうえで、人間関係の目的に照らして適切な対応をしても、人間関係を改善できるとは限りません。

でも、自分でできることをやった後は、少し気が楽になるのではないでしょうか?

それでも人間関係から強いストレスを感じる場合は、どうすればよいでしょう?

観察することによってストレスの連鎖を防ぐ

まず、そのストレスとそこから引き起こされる考えや感情をありのままに観察しましょう。

このように、意識的に観察することによって、無意識のうちにストレスがネガティブな感情やさらなるストレスを生み出すという悪循環にならないようにしていきましょう。

攻撃してくる相手にはどうするか?

現実の世界は、自分の思い通りになるとは限りません。攻撃してくる相手はそのいい例です。一般的に攻撃してくる相手への対処として、次のような方法があります。

  • 屈服する
  • 逃げる
  • 対立する

普通、私たちは、相手や状況でこれらの方法を使い分けます。たとえば、

  • 会社で上司に叱られる ⇒ 屈服する
  • 森でクマに襲われる ⇒ 逃げる
  • 同僚から議論を吹っ掛けられる ⇒ 対立する

MBSR(マインドフルネスストレス低減法)では、攻撃されたときのもう一つの方法として、合気道でいうところの「同化する」ということを学びます。方法は次のとおりです。

  • 自分の心のバランスを保ちながら、恐怖感があっても、それに左右されることなく、全体を冷静に観察します。
  • 相手の動きに合わせて動き、相手の身体に触れて、同じ方向を向きます。
  • 相手を尊重はしているが恐れてはいないこと、攻撃のエネルギーを自分には向けてほしくないことを伝えます。

まとめ

人間関係は、相手があることなので、マインドフルネスで必ず改善できるとは限りません。

ただし、マインドフルに人の話を聞いて、自分の考えや感情をマインドフルに観察し、人間関係の目的に沿った対応をすることで、改善できる場合もあるでしょう。人間関係からくるストレスは、マインドフルネス瞑想によって軽減することができます。

マインドフルネスを習得するためには、8週間、継続してマインドフルネス瞑想を練習する必要があるとされています。

効果的にマインドフルネスを習得するには、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の8週間のプログラムに参加されることをお勧めします。


出典:

ユヴァル・ノア・ハラリ 2016 サピエンス全史

この記事を書いた人
しげき

1963年生まれ。大阪市出身。京都大学法学部卒。KDDIやマイクロソフトなど、30年以上、IT業界で営業・マーケティングを担当した。
2007年からマインドフルネス瞑想を継続して実践する。
2018年にセミリタイアし、マインドフルネスの講師となる。MBSR 認定講師。

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