失敗しても落ち込まないために

マーティン・セリグマン博士の著書 “Learned Optimism” 「邦題:オプティミストはなぜ成功するか」 によると、失敗したときに落ち込むのは、自分の説明スタイルによるものだそうです。楽観的な説明スタイルを学んで身につけることで、失敗しても落ち込まないように自分を変えることができるといいます。

落ち込んだときに大切な「説明スタイル」とは何か、それから楽観的な説明スタイルの学び方の概要をまとめました。

説明スタイルとは

「説明スタイル」とは、成功や失敗したときに、その成功や失敗を自分自身に対してどのように説明するか、ということです。セリグマン博士によると、説明スタイルには、「悲観的な説明スタイル」と「楽観的な説明スタイル」の2つの傾向があるといいます。

説明スタイルには、「永続性」、「普遍性」、「個人度」の3つの側面があり、それぞれ、心理テストを受けることによってその楽観度の点数を計測することができます。 書籍「オプティミストはなぜ成功するか」には、この心理テストが掲載されています。

これらを足し合わせることにより、 自分の説明スタイルが悲観的であるか、楽観的であるか、あるいはその中間であるか、を調べます。

説明スタイルの3つの側面「悲観的な説明スタイル」の特徴「楽観的な説明スタイル」の特徴
永続性失敗はずっと続くと考える。
成功は長続きしないと考える。
失敗は一時的なものだと考える。
成功はずっと続くと考える。
普遍性失敗は他の分野でも起こると考える。
成功はたまたま起こっただけだと考える。
失敗はたまたま起こっただけだと考える。
成功は他の分野でも起こると考える。
個人度失敗は自分のせいだと考える。
成功は外部的な理由によるものと考える。
失敗は外部的な理由によるものと考える。
成功は自分のおかげだと考える。

セリグマン博士によると、「楽観的な説明スタイル」を持つ人は、失敗しても立ち直りやすいだけではなくて、うつ病になりにくく、免疫力が高く、長生きする傾向があるそうです。

保険の営業、政治家、スポーツ選手などの分野では、「楽観的な説明スタイル」を持つ人が成功しやすいとのことです。その一方で、弁護士、パイロット、経理など、リスクをできるだけ避けることが重要な職業は「悲観的な説明スタイル」の人の方が向いています。

また、特に日本のような社会では、「楽観的な説明スタイル」を持っていても、失敗を人のせいにするような人は受け入れられないだろう、とセリグマン博士も言っています。

楽観的、悲観的の両方の説明スタイルを状況に応じてうまく使いこなせるようになるのが理想的だそうです。

人の説明スタイルは、遺伝や環境の影響を受けて決まります。しかし、「楽観的な説明スタイル」を意識的に学んで習得することもできるそうです。

オプティミズムの学び方

セリグマン博士によると、困ったことが起こったときに悲観的になってしまう人が「楽観的な説明スタイル」を身につけるためには、「ABCDEモデル」という方法を使うとよいそうです。

このABCDEモデルは、

  • 自分に起こった困った状況 (Adversity) に対して、
  • 自分がどのような思い込み (Belief) を持ち、
  • その結果、どのような感情を持ったり、どんな行動をとってしまったか (Consequence) を記録し、さらに、
  • この思い込みに対して自分で反論 (Disputation) し、
  • 自分を元気づける (Energization) ことを試みる、

というものです。実際にこれらの項目を紙に書いたり、知っている人に「否定的な思い込み」になりそうなものを言ってもらって、その人に反論を試みる、という練習をします。

否定的な思い込みに対して反論するには、

  • その思い込みに証拠があるのか、
  • その思い込み以外の別の理由は考えられないか、
  • そのような思い込みをすることが、今適切かどうか、

ということを考えてみます。

さらに、否定的な思い込みに対して、どのような元気づけを使ったらうまくいくかを考えます。

下に一例を示します。この例のように自分に起こった困った状況をたくさん思い出して、ABCDE の順に書き込んでいきます。

ABCDE モデルのステップ
A. (Adversity) 困った状況今月の売上目標が達成できそうにない。
B. (Belief) 思い込み自分はこの仕事には向いていない。だから、頑張っても無駄だ。
C. (Consequence) その結果暗い気持ちで一日を過ごした。何も手に付かない。
D. (Disputation) 思い込みへの反論今回目標達成できないのは、自分だけではない。また、目標達成した月もあったのだから、自分がこの仕事に向いていないことにはならない。
今月はだめでも、今の仕事は来月の目標達成のために役立つかもしれない。だから、今頑張っても無駄ということはない。
E. (Energization) 元気づけ一生懸命仕事していればなにかいいことがあるはずだから、明日から気合をいれて頑張ろう。そのほうが自分の性に合っているし、気が紛れる。

マインドフルネスとの関係

マインドフルネスは、今の体の感覚や心の状態を観察することですから、マインドフルネスを練習をすることによって、「否定的な思い込み」や、「否定的な思い込みがもたらす結果」について、観察しやすくなると思います。

また、自分の思い込みへの反論を考えるときには、感情から離れて客観的に物事を見る心の平静さが必要になります。この面でも、マインドフルネスの修養が役に立つと思います。

「楽観的な説明スタイル」を持つ人にとっても、時には行動に伴うリスクを適切に評価しなければならないことがあると思います。

マインドフルネスを通じて、自分のはやる心、リスクを過小評価したいと思う心に気がつくことができるのでは、と思いました。


出典:
「オプティミストはなぜ成功するか 」マーティン・セリグマン
「世界で1つだけの幸せ」マーティン・セリグマン