この記事では、心がさまよっている時に人は不幸になるということを示す脳科学の実験をご紹介します。
心がさまよっている時、不幸になるとは?
人間は、過ぎ去った過去のことや、まだ始まっていない将来のことをつらつらと考えて多くの時間を過ごします。
このような「さまよう心 (wandering mind) 」は、脳のデフォルトモードネットワーク(DMN)の働きによるものです。
この機能によって、人は、過去の経験から学んだり、将来に備えたり、インスピレーションを得ることができます。「人類が進化の過程で獲得した能力」という見方もできるでしょう。
その一方で、「心がさまよっている時、人は不幸になる」とされています。マインドフルネス瞑想は、「今、ここ」に意識を集めることによって、くよくよ悩まず、ストレスを減らすことを目的としています。
でも、「心がさまよっている時、人は不幸になると」いうのは、本当でしょうか?
ハーバード大学で行われた実験を紹介します。
実験の方法
実験の参加者は、ウェブサイト( trackyourhappiness.org) を通じて募集しました。この結果、期間中に2,250人の参加者がウェブサイトで実験への参加を登録しました。
参加者は実験に参加するために専用の iPhone アプリをインストールし、以下の情報を入力します。
- 年齢
- いつもの起床時間と就寝時間
- 1日に何回、調査サンプルを提出するか (デフォルト:3、最低:1)
iPhone アプリは、ランダムな時間に参加者に次の質問をします。
- 幸せのレベル(0から100まで)
- 今考えていること(嫌なことで心さまよう、楽しいことで心さまよう、心さまよっていない、など)
- 今やっていること(休んでいる、働いている、など)
- 今の環境
参加者は、途中で実験への参加を中止することができます。継続して参加した場合でも、50サンプル集まった時点で一旦中止します。
実験の結果
実験の結果、以下のことがわかりました。
何をやっているときでも、心はさまよう
実験の結果を分析すると、平均的な人は、日中、46.9% の時間、心がさまよっています。起きている時間の半分近くの時間、心はさまよっていることになります。
また、働いているときでも休んでいるときでも、どんな活動をしていても心はさまよいます。その時にやっている行動の種類は、心さまよっているかどうかについて、3.5% しか影響していません。ただし、セックスだけは例外で、セックスしているときには心はほとんどさまよいません。
心さまよっているときは、不幸を感じている
実験の結果を分析すると、心がさまよっているときは、心がさまよっていないときと比べると、より不幸を感じています。楽しいことを考えて心さまよっているときでも、心さまよっていないときと比べると不幸です。
また、嫌なことで心さまよっているか、楽しいことで心さまよっているかは、その時にやっていることとはほとんど関係ありません。
心さまよっているから不幸になる その逆ではない
実験の結果を分析すると、心がさまよっていると、次のサンプル取得時に不幸を感じていることが多かったです。ところが、不幸を感じているからといって、次のサンプル取得時に心がさまようという関係はありませんでした。
この実験からわかること
過去や将来のことをあれこれ考えて心がさまようということは、人類が進化の過程で得た能力です。ところが、心がさまよっている状態は、ストレスの影響を受けやすく、人を不幸にします。
ストレスを減らして、今やっていることに集中するため、必要な時に「今、ここ」に意識を向けるマインドフルネスのスキルを身に着けましょう。
マインドフルネス・イニシアティブが運営するマインドフルネス講座については、下のリンクをご参照ください。

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