マインドフルネスの最も有名な定義は、ジョン・カバットジン博士によるものでしょう。その定義は次のとおりです。
Paying attention in a particular way : on purpose, in the present moment,and non-judgmentally. (出典: Jon Kabat-Zinn “Full Catastrophe Living Revised Edition” 2013)
これを日本語にすると、「意識的に、今の瞬間に、価値判断なしに、注意を払うこと」となります。
その意味をひとつずつ見ていきましょう。
「意識的に」
普段、我々は無意識のうちに様々なことを体験し、無意識のうちに様々な感情を持ち、さらに、無意識のうちにその感情の影響を受けています。これは、よく「自動操縦」の状態と呼ばれます。
自動操縦はとても便利なのですが、時として問題を起こすことがあります。たとえば、無意識のうちにネガティブな感情が次々と起こったり、ネガティブな感情に対して、不健康な対処をしてしまったりします。
マインドフルネスでは、意識的に、今、体験していることを観察することによって、自動操縦の状態から抜け出します。
「今の瞬間に」
我々は、よく、過去のことを思い返したり、将来のことを想像したりして漫然と過ごしています。その多くは無駄な時間です。
そこから得られる情報は、バイアスがかかっていて不正確で、ネガティブな考えや感情を引き起こしがちです。
マインドフルネスでは、今の瞬間に起きている現象を観察します。たとえば、呼吸や体の感覚、心の中で発生している考えや感情を観察します。
この瞬間に起きていることを観察することによって、現実を正しく理解し、対処することができます。
「価値判断なしに」
マインドフルネスでは、今起こっていることをありのままに観察することによって、現実に起きている現象と、そこから引き起こされる考えや感情を区別します。
普段我々は、自分が体験していることと、そこから引き起こされる考えや感情を混同しがちです。
例えば、身体に痛みの感覚があると、その感覚に対する不快な気持ちが起こります。さらに、
- 「痛みの感覚があるのは良くないことだ」
- 「このような痛みの感覚は自分にはふさわしくないものだ」
- 「この痛みの原因は、自分の不運や不幸のせいだ」
というふうに、その痛みの感覚に関する様々な価値判断、それに伴うネガティブな考えや感情が無意識のうちに引き起こされます。
この時、もとの痛みの感覚と、不快な気持ちやネガティブな考え、感情はごっちゃになって区別がつかなくなります。
さらに、ネガティブな考えや感情は、次のネガティブな考えや感情を引き起こし、どんどん連鎖していきます。
ところが、実際は、身体の痛みの感覚は、身体に起こっている現象であって、そこから引き起こされる考えや感情とは別のものです。
価値判断なしに、ありのままに、今、起こっていることを観察することによって、ネガティブな思考が勝手に連鎖していくことを防ぐことができます。
自分の体や心に対して、やさしい気持ちと好奇心を持つと、価値判断なしに、ありのままに観察しやすくなります。
「注意を払う」
視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感を使って、「今、ここ」で起きていることを観察します。さらに、自分の体の感覚や心の中の考えや感情も、今起こっている現象として、観察します。
たとえば、茶道や華道、武道などは、マインドフルネスを養う良い方法だと思います。その道の達人は、いつも、「今、ここ」で起こっていることに気づいている感じがしますよね。
あるいは、マインドフルネス瞑想を通じて練習することも可能です。
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