家庭内暴力(DV) の問題を抱えた男性は、マインドフルネスの実践を行うことにより、怒りをコントロールしやすくなる、というノルウェーの研究を紹介します。1)Cognitive behavioural group therapy versus mindfulness-based stress reduction group therapy for intimate partner violence: a randomized controlled trial
実験の方法
- 家庭内暴力の問題があり、自発的にセラピーを受けることを希望している144名の男性を次の2つのグループにランダムに分けます。
- 集団認知行動療法 (CGBT: Cognitive Behavioral Group Therapy) を受けるグループ。15回のグループセッションを実施後、2回の個人面談を実施。
- マインドフルネスストレス低減法 (MBSR: Mindfulness Based Stress Reduction)を受けるグループ。8回のマインドフルネスグループセッションの後、1回の個人面談を実施。
- 参加者とそのパートナーは、各プログラムに参加する前、プログラムの3か月後、6ヶ月後、9か月後、12ヶ月後の家庭内暴力の程度を Revised Conflict Tactics Scale (CTS2) 2)Revised Conflict Tactics Scale (CTS2)を使って評価します。
実験の結果
集団行動療法とマインドフルネスストレス低減法の両方で、プログラムの参加後、家庭内暴力のリスクが低くなりました。
家庭内暴力のリスク評価
プログラム参加前 | プログラム参加後12か月 | |
---|---|---|
集団行動療法参加者 | 0.85 | 0.08 |
マインドフルネスストレス低減法参加者 | 0.88 | 0.19 |
いずれのプログラムも、家庭内暴力の問題の改善に効果があることがわかりました。
この実験からわかること
この実験で使用されたMBSR(マインドフルネスストレス低減法)プログラムは、怒りのコントロール(アンガーマネジメント)のために特化したものではありません。肉体的、身体的なストレスをマインドフルネスの実践を通じて低減することを目的に開発されたプログラムです。
それに対して、この実験で使用された集団認知行動療法は、家庭内暴力に特化したプログラムでした。
それでも、マインドフルネスストレス低減法に同様の効果が認められたということは、マインドフルネスの実践が、家庭内暴力の問題を抱えた人に対しても、有効だということを示しています。
マインドフルネスの実践では、自分の思考や感情をありのままに観察する練習を重ねます。そうすることで、怒りの感情に振り回されている自分に気が付き、怒りへの対処をとろうとするきっかけをつかみやすくなるのだと思います。

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