マインドフルネスは、「今、ここ」で起こっていることに気がつくことです。
私たちは、すでに終わったことや、まだ始まってもいない将来のことをあれこれ考えて、多くの時間を過ごしています。もし、「今、ここ」に意識を向ける技術を身につけることができたら、より有意義な時間を過ごすことができそうですね。
マインドフルネスには、ストレスを減らし、免疫を高めるなど、様々な効果があることが実証されています。
この記事では、マインドフルネスを身につける方法として、様々なマインドフルネス瞑想のやり方を説明します。いずれも、MBSR (マインドフルネスストレス低減法)のコースで取り入れられているものです。
マインドフルネスの入り口として、この中で自分に合った方法を試してみてはいかがでしょうか?
食べる瞑想
「食べる瞑想」では、五感を使って食べ物を観察することによって、「今、ここ」で起こっていることに気付きます。
まず、「レーズン・エクササイズ」を試してみるとよいでしょう。やり方、以下の通りです。
- まず、干しブドウか、それに類する小さな食べ物を2粒、用意します。
- 一粒目を手に取って、自分の目でできるだけ詳しく観察します。時間をかけて、まるで、「火星人が地球にやってきて初めて干しブドウを見る時のように」、干しブドウを新鮮な気持ちで、初めて見る「物体」として扱います。表面のしわとか、色とか、光の反射具合とか、できるだけ詳しく観察します。
- 次に、指で触った感覚を観察し、耳の近くにもっていって音を観察します。音は聞こえないですが、耳の近くに持ってきて指で転がすと、かすかに音がします。
- さらに、においをかいで、唇に乗せて、口の中に入れて、歯の間に乗せて、噛んで、飲み込みます。このそれぞれの過程で、時間をかけて、五感で感じることを、できるだけ詳しく観察します。
- 途中で、心の中に、「なんで私こんなことをやっているのだろう」とか、「早く食べてしまいたい」とか、「もっと食べたい」とか、いろいろな考えが起こってきたら、自分の心にそのような考えや感情が起こっていることに気が付いて、自分の意思で「物体」の観察に戻ります。
- 残ったもう一粒も同じ要領で観察します。
ここまでの進め方をビデオにしたものがありますので、ご参照ください。
食べる瞑想は、普通に食事をするときにも実践できます。
食事をするときに、レーズン・エクササイズの要領でやると、時間がいくらあっても足りませんので、最初の一口、二口だけでも実践するといいでしょう。食事のたびにマインドフルネスの実践ができます。
この食べる瞑想を毎日実践すると、マインドフルネスを養うことだけではなくて、さまざまなメリットがあります。以下、私の感想です。
- 食事がとても美味しく感じられます。普段食べているものでも、食事のたびに新しい発見と感動があります。
- 食べ物に関する欲求が観察できます。早く口に入れたい、もっとたくさん口に入れたいといった欲望をありのままに観察できます。とても興味深いです。
- ダイエットの効果があります。食べ物に関する欲求を客観的に観察することにより、食欲を少しずつコントロールできるようになります。その結果、食事の内容や量を調節できるようになります。
以下のページもご参照ください。
マインドフルネスヨガ
マインドフルネスヨガは、ヨガのポーズを取りながら、身体の感覚をありのままに観察することを目的としています。
体の感覚は、「今、ここ」で起きているので、これを観察することがマインドフルネスの実践になります。
様々な思考や感情が起きても、意識を身体の感覚に戻しやすいので、マインドフルネスの初心者でも比較的簡単に実践できます。
マインドフルネスストレス低減法では、最も簡単なハタ・ヨガのポーズが採用されていて、ヨガの初心者でも実践可能です。椅子に座ったままでも可能です。詳細は、椅子ヨガの記事をご参照ください。
マインドフルネスヨガを実践するには、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)講師による音声ガイダンスを聞きながらやるのがいいでしょう。
その他、詳細は、マインドフルネスヨガの記事もご参照ください。
ボディスキャン
ボディスキャンは、静止した状態で、自分の身体のそれぞれの部分の感覚を順番に観察し、最後に身体全体の感覚を観察する瞑想方法です。
この瞑想も、自分の身体の感覚を観察することにより、「今、ここ」で起こっていることに気付くことを目的とします。
通常は、ヨガマットやカーペットなど柔らかすぎない床の上に横になった姿勢で行います。眠くなるときには座った姿勢でやっても構いません。
MBSR講師による音声ガイダンスを聞きながら実施するのがいいでしょう。
ボディスキャンの実践では、ほとんどの人が途中で眠くなって寝てしまいます。あるいは、いつのまにか別のことを考えていて、ガイダンスを聞いていなかったことに気が付きます。自分もそうでした。この練習は集中力と忍耐力を鍛える練習でもあると思います。
眠気の対策としては、
- 目を開けたままボディスキャンを行う。
- 座ってボディスキャンを行う。
- 横になって、肘から先を床から持ち上げてボディスキャンを行う。
といった方法があります。
自分の場合は、次の方法がとても効果的でした。
- 自分の身体の各部分を昔からの友達だと思って、ボディスキャンの時に身体の各部分に会いに行く意識を持つ。
- なにか別のことを考え始めたら、そのことに気がつく。自分の心を乗っ取ろうとしている「考え」とゲームをしている感覚を持つ。
身体の感覚に意識を集中したままで45分間のボディスキャンを最後までやると、全身の感覚が感じられて、とても気持ちいいです。
ただし、気持ちよくなろうと思ってボディスキャンをやると、そんな意識が観察を邪魔してうまくいかなかったりします。そのときには、この残念に思う気持ちも観察するようにしましょう。
詳しくは、ボディスキャンの記事をご参照ください。
座る瞑想
座る瞑想は、椅子あるいは、床においたクッションや座蒲に座って、背筋を伸ばした安定した姿勢で行います。
座る瞑想の観察の対象は、下のとおり、いくつかあります。このどれかを選んで集中して観察してもいいし、上から順番に観察の対象を変えていっても構わないです。
観察の対象 | 方法 |
呼吸の観察 | 鼻、胸、お腹など、呼吸を感じやすい場所を選んで、その場所の感覚で呼吸を観察します。 |
身体の感覚の観察 | 体全体の感覚を観察します。呼吸と合わせて観察します。 |
音の観察 | 今、聞こえている音の特徴を観察します。 |
考えや感情の観察 | 心に起こっている現象として、考えや感情を観察します。 |
何も選択しない瞑想 | 意識に上がってくるすべての感覚を観察します。 |
まず、音声ガイダンスを聞いて実践してみるといいでしょう。その上で、自分にあった方法をガイダンスなしに試してみましょう。
ボディスキャンと同様、20-45分程度の時間をかけてやると、とても気持ちよく感じることがあります。ただし、その気持ちよさを求めて瞑想しようとすると、そのような欲求が邪魔をしてうまく瞑想できません。その時は、「気持ちよくなるために瞑想したい」という欲求を心に起こっている現象として観察します。
詳細は、座る瞑想の記事も合わせてご参照ください。
歩く瞑想
歩く瞑想(歩行瞑想)は、マインドフルネス瞑想の方法の一つです。歩くときの身体の感覚を観察することにより、意識を「今、ここ」に向けていきます。
まず、部屋の中でとてもゆっくりとした速度で歩く瞑想を練習することをお勧めします。足の裏の感覚に意識を集中します。
歩く瞑想は、普通に歩いているときにも気軽に実践することができます。ただし、部屋の中でやるときと比べて、いろいろなことに心を奪われやすくなります。するときには、意識が「今、ここ」から離れてしまった時に、意識が「今、ここ」に戻るまで、立ち止まって待つことができます。
詳細は、歩く瞑想の紹介ページをご参照ください。
慈悲の瞑想
慈悲の瞑想は、他の人や生き物とのつながりを感じ、優しい気持ちを育てるものです。
まず、自分自身へのやさしい気持ちを思い描いて、それを自分の身近な人、苦手は人、さらに、すべての生きとし生けるものに広げていきます。
このようにして自分自身と他者に対する優しい気持ちと好奇心を育てていきます。これがマインドフルネスの習得に役立ちます。「今、ここ」で起こっていることを興味を持って観察するには、自分や他者への好奇心や優しい心が役に立つからです。
詳細は、慈悲の瞑想についてのページをご参照ください。
まとめ
ここでは様々なマインドフルネス瞑想の方法を紹介しましたが、ひとりで練習して習得するのは、なかなか難しいと思います。
これらのマインドフルネス瞑想を効果的に習得するには、8週間のMBSR(マインドフルネスストレス低減法)のプログラムに参加されることをお勧めします。
このプログラムは、マサチューセッツ大学医学部でジョン・カバットジン博士が科学的な知見に基づいて、肉体的、精神的なストレスを低減するために開発したものです。