この記事では、「マインドフルネス」の意味、効果、その実践方法を説明します。
これからマインドフルネスを学ぼうという人にとって、役に立つ情報です。
マインドフルネスの意味
マインドフルネスとは「気が付いているということ」
「マインドフル」とは、英語で「気がついている」という意味です。その名詞型の「マインドフルネス」は、「気がついていること」という意味です。
何に気が付いているかというと、「今、ここ」で起こっていることについてです。
「今、ここ」で起こっていることというのは、例えば、次のようなことです。
- 自分の身の回りで起こっていること。五感(触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚)を通じて感じるもの。
- 自分の身体で感じていること。身体の感覚。
- 自分の心の中で起こっていること。思考や感情。
「今、ここ」で起こっていることを意識している状態を「マインドフルな状態」といいます。
「マインドフルネスを実践する」といえば、「今、ここ」で起こっていることに注意を向ける方法を実践する、ということです。「マインドフルネス瞑想」はこの実践方法の一つです。
マインドフルネスは、難しいことではなく、日常生活で簡単に体験することができます。
例えば、「あなたは今何を考えていますか?」と問われたとしたら、今考えていることを答えられますね。自分の考えていることに気がついている状態は、マインドフルな状態、つまりマインドフルネスです。

マインドフルの反対は「マインドレス」
ところが、「今、ここ」で起こっていることに気が付いている状態、つまりマインドフルネスは、長く続きません。
自分の思考や感情、体の感覚を意識し続けることは意外と難しいことです。いつの間にか無意識のうちに、さまざまな思考や感情が心に起こって、その思考や感情に取り込まれてしまいます。
すでに終わったことを何度も思い返して悔やんだり腹を立てたり、あるいは、まだ始まっていない将来のことが不安で、考えが堂々巡りするということはありませんか?
そのような「心ここにあらず」で「うわの空」の状態の時、「今、ここ」で起こっていることに気が付いていません。このような状態をマインドフルの反対の「マインドレス」と言います。

過去のことや将来のことをつらつらと考えているときは、無意識のうちにネガティブな感情に傾いて、ストレスの影響を受けやすいのです。
マインドフルネスを実践することによって、意識的に「今、ここ」で起こっていることに注意を向けて、ストレスを減らすことができるのです。
没頭することではない
ところで、何か一つのことに没頭しているとき、そのことに集中して雑念が起こらない状態になることがあります。このことを「フロー」呼びます。例えば、仕事に没頭しているとき、ゲームに没頭しているときなどに「フロー」は起こります。
この「フロー」は、マインドフルネスとは別の概念です。マインドフルネスを高めてもフローには直接影響しないという研究があります。
マインドフルネスの効果
「今、ここ」で起こっていることに意識を向けることがマインドフルネスですが、このマインドフルネスを実践することによって、どんな効果が期待できるのでしょうか?
ストレスの減少
ストレスで悩んでいる人の多くは、「今、ここ」で起こっていることで悩むよりも、過去の嫌な記憶や苦痛を思い出したり、まだ来ない将来のことを心配したりして悩んでいます。マインドフルネスを実践し、自分の心を「今、ここ」に向けることによって、過去の嫌な記憶や将来の不安で心を乱されることが少なくなります。その結果、ストレスも減少していきます。
また、マインドフルネスを実践することによって、どのような時にどのような感情が起こり、ストレスと感じるのか、また、無意識のうちにどのようなストレスへの対処をしているか、という全体の構図が見えてきます。このように自分自身を客観的に観察することが、ストレスを減らし、効果的な対処方法を意識的に選ぶきっかけになります。
さらに、マインドフルネス瞑想の実践を続けていくと、自分の身体や心をありのままに観察する過程で、自分自身に対する優しさや好奇心が強化されます。やさしい気持ちや好奇心が強化された脳の方が、ネガティブな感情が強化された脳よりも、ストレスや困難への対処がやりやすくなるのです。
感情や苦痛の制御
何かに腹を立てているとき、無意識のうちに腹が立つことが次々と思い出されて、怒りの炎がどんどん大きくなっていくことがあります。
もし、マインドフルネスを実践することによって、自分の怒りの感情に気が付いて、その感情を客観的に観察し、受け入れることができれば、だんだんと怒りはおさまってくるものです。マインドフルネスは、怒りへの対処だけでなく、様々な感情を自分の意志で制御するのに役立ちます。
また、身体の痛みを、ありのままに観察していくことで、身体の痛みと、そこから引き起こされるネガティブな考えや感情を区別できるようになります。身体の痛みに対しても、より冷静に対処できるようになります。

マインドフルネスは、日常生活の様々な場面でこのような効果を発揮します。いくつかの例を以下のリンクで紹介します。
マインドフルネスの実践方法
マインドフルネス瞑想
マインドフルネスの実践方法の一つとして、マインドフルネス瞑想があります。
「瞑想」というと、怪しい、神秘的なイメージがあるかもしれませんが、「マインドフルネス瞑想」には怪しいところも神秘的なところはありません。それは、マインドフルネス瞑想は、「今、ここ」で起こっていること(思考や感情、身体の感覚)に気がつくための瞑想方法だからです。何かを信じるための瞑想ではありません。しかも、マインドフルネス瞑想の効果は科学的な方法により実証されています。
マインドフルネス瞑想のやり方
マインドフルネス瞑想を試してみるには、まず、椅子に座って自分の呼吸を観察するといいでしょう。要領は次のとおりです。
- 背筋を伸ばして椅子に座る。
- 目を閉じて、顔、肩、腕などの力を抜く。
- 鼻の穴、胸、あるいは、お腹など、自分が呼吸を感じやすい場所を選ぶ。
- その場所の感覚を通じて、呼吸の流れ(吸う息の始まり、続き、終わり、吐く息の始まり、続き、終わり)を観察する。
- 心が呼吸から離れて、別のことを考えだしたら、そのことに気が付いて、考えていることを手放し、呼吸の観察に戻る。
最初のうちは、音声ガイダンスを聞きながら短い時間からはじめて、次第に、実践する時間を長く、音声ガイダンスなしでも実践できるようにします。
試しに、次の10分間の瞑想ガイダンスを聞いて、試してみるといいでしょう。
マインドフルネス瞑想のやり方として、座る瞑想の他にも、歩く瞑想やボディスキャン、マインドフルネスヨガなど、様々な方法があります。
柔軟体操、太極拳、気功などもゆっくりと動きながら、体の動きや心の動きを観察することができれば、マインドフルネスの実践となります。
日常生活での実践
マインドフルネスはマインドフルネス瞑想を実践する以外にも、日常生活の中でも実践することができます。
例えば、歯磨きや掃除など、毎日決まった時間に行うことをマインドフルにやってみます。その時の心や身体の感覚の変化を意識しながら、思考や感情にとらわれないようにやってみます。
食事するときも、自分の五感を使って食べる時の感覚を観察してみましょう。「食べる瞑想」とも言います。
他にも、人の話を聞いている時、人の話に意識を集中させる実践方法もあります。「マインドフルリスニング」と言います。
日常生活の中で、歩く時、ランニングする時、水泳するときにも、マインドフルネスの実践は可能です。
まとめ
マインドフルネスは、「今、ここ」に意識を向けることを意味しています。
マインドフルネスの実践を継続することにより、ストレスを減らす効果があることが科学的に実証されています。
マインドフルネスを始めるには、まず、音声ガイダンスを聞きながら、「座る瞑想」を試してみるといいでしょう。
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