自己認識

自己認識SIY

「自己認識(Self-awareness)」は、Google が開発した人材開発プログラム SIY (サーチ・インサイド・ユアセルフ)で学ぶエモーショナル・インテリジェンスの要素の一つです。文字通り、自分について認識することです。

この記事では、自己認識について解説します。自己認識について理解を深めたい人にとって役に立つ情報です。

自己認識とは

エモーショナル・インテリジェンスの研究者、Daniel Goleman 博士は、自己認識について次の通り述べています。

自己の内面の状態、好み、資質、直感を知ること

Daniel Golman 著 Emotional Intelligence

ここでいう自己認識には、自分の内面の状態だけではなくて、自分にとって大切なもの(好み)や、自分の強みや弱み(資質)などが含まれます。

自分の好みや資質を知ることは、モチベーションにとっても大切なことです。

また、Daniel Goleman 博士は、次のようにも述べています。

自己認識とは、自分の内面の世界、思考や感情を知覚する能力のことである。この能力を高める方法の一つがマインドフルネスだ。

ここでは、自己認識の対象を、自分の内面の世界(思考や感情)と狭く捉えています。自分の思考や感情を自覚することは、自分をコントロールするためこと(自己管理)の前提となります。思考や感情に振り回されないためには、それが何であるか理解する必要があるのです。

それから、Goleman博士は、マインドフルネスが自己認識を高めるための方法であると言っています。

マインドフルネスの役割

マインドフルネスとは、「今、ここ」で起こっていること、例えば、呼吸の感覚、体の感覚、心の中の思考や感情に気が付く、ということです。

マインドフルネスの実践を毎日続けていくと、自分を客観的に、ありのままに観察する態度が身に付きます。そうすることで、自己認識が深まっていきます。これは、画像の解像度が高くなっていくのに似ています。

上の二つの画像のうち、右の画像は解像度が高いので、蝶の羽の模様や触覚の様子がよくわかります。

マインドフルネスの実践により、自分の内面を、まるで解像度の高い写真を見ているように、より詳しく、ありありと認識できるようになるのです。

感情とは何か?

自己認識には、さまざまな要素がありますが、中でも自分の「感情」を認識することは、自分をコントロールするためにとても重要です。

ところで、感情とは何でしょう? なぜ、私たちは感情を持っているのでしょうか?

感情は私たちが進化の過程で獲得したものです。つまり、生き残って遺伝子を次世代に伝えるためのメカニズムの一部です。

自らの生存や遺伝子を残すことに関して、五感を通じて外部からの刺激があった時、あるいは、自分の感覚や思考によって内部から刺激を受けた時、感情が起こります。この感情が、生き残って遺伝子を残すための行動を促します。

たとえば、道端の草むらから、蛇がいるような音がしたとします。その音の刺激に対して、恐怖の感情が沸き起こります。この感情が「草むらから離れる」という行動を促します。これは生き残りのためのメカニズムです。

外部からの刺激沸き起こる感情促される行動
道端の草むらから、蛇がいるような「シャー」という音が聞こえた恐怖:「蛇だ!」草むらから離れる
草むらの蛇

あるいは、道を歩いているとピザが焼けるようないい匂いがしてきたとします。想像してみてください。この匂いの刺激への反応として、うれしいような、うらやましいような気持ちがわいてきます。その気持ちが、匂いのもとを探させる、という行動をとらせます。

これも食べ物を得るという生存のためのメカニズムです。

外部からの刺激沸き起こる感情促される行動
ピザが焼けるようないい匂いがしてきた期待:「食べ物だ!」匂いのもとを探す
おいしいピザのにおい

感情は、心の中で感じるばかりではなく、体の感覚としても感じます。怒りを感じる時に頭に来たり、腹が立ったり、幸せを全身で感じたりします。このことも、感情が刺激に対する生理的な反応であることを示しています。

体の感覚を観察することで、感情をより客観的に観察することができます。下の記事も参考にご参照ください。

感情は、進化の過程で身に着けた生存のためのメカニズムです。そのため、次のような特徴を持っています。

  • 感情はすべての人類に共通していること。フィンランドで行われた実験1)https://www.pnas.org/content/111/2/646によると、言語や人種にかかわりなく、ほとんどの感情はすべての人類に共通しているそうです。私たちは、時として、「このようなネガティブな感情を持っているのは自分だけだ」と考えてしまうことがありますが、実は、その感情もすべての人類と共有しているものなのです。人類はほとんどの遺伝子を共有しているためです。
  • 多くの感情は対人関係に関連していること。人類は、群れをつくることによって生き残ってきました。個々の人間にとって、群れの中で認められて地位を得ることは、遺伝子を将来に残すために重要な要素でした。したがって、感情の多くは、愛情、感謝、孤独、妬みなど、人間関係に関するものです。
  • 感情は狩猟採集生活に合わせて最適化されているということ。多くの感情は、少人数で移動しながら狩猟採集生活していたころに合わせて進化しました。進化はゆっくりと進むので、私たちの感情はそのころからほとんど変わっていませんが、私たちの社会生活は大きく変わってしまいました。感情のままに行動すると、現代生活では不都合なことが多々あります。その一方で、現代社会に合わせて生活することで、ストレスや満たされなさを感じるのです。

感情を認識する利点

マインドフルネスの実践を通じて、自分の感情の認識を深めることによる利点、次のとおりです。

感情は意思決定に重要な役割を果たす

Daniel Goleman博士によると、ある頭のいい弁護士が脳腫瘍の手術で、理性をつかさどる脳の部位(前頭野)と感情をつかさどる脳の部位(偏桃体)を接続する神経を切断しなければなりませんでした。

すると、手術後、その弁護士は頭はいいままだったのですが、意思決定をすることができなくなってしまったそうです。2)https://www.youtube.com/watch?v=UUPmJmFmbhE

つまり、感情は、意思決定に大きな影響を与えています。

私たちは、いろいろな意思決定を自分の意志や正当な理由で行っていると考えがちですが、このような傾向も進化の結果獲得したものといえるでしょう。一貫した意志で行動していると周りの人に思われ、自分でもそう信じている方が成功しやすかったからです。

実際には、意思決定は、無意識のうちに感情の影響をうけているものです。自分の感情、あるいは周りの人の感情を理解することによって、意思決定の内容を予測したり、間違いに気が付いたりすることができるのです。

感情には重要な情報が含まれている

アメリカのアイオワ大学で行われた、Iowa Gambling Task という心理学の実験があります。

これは、次のような実験です。

  1. 被験者に、4つのカードの山を見せる。うち、2つは青いカード、残り2つは赤いカード。
  2. 被験者は、4つのカードの山から、1枚ずつカードを引く。被験者は、1枚引くごとに、ゲームに勝てばお金をもらえる。負ければ、お金を払う。
  3. ゲームのルールは、青いカードを引けば勝ち。赤いカードを引けば負け。被験者はこのルールを知らない。
  4. 問題は、何枚カードを引けば、被験者はこのルールに気が付くか、ということ。

平均的な被験者は、

  • 50枚カードを引いたところで、「なんとなく、青いカードを引くと勝つことが多いようだ」と気が付きます。
  • また、80枚カードを引いたところで、「青いカードを引くと必ず勝つ」ということに気が付きます。

ところが、この実験では、うそ発見器が被験者に取り付けられていて、手の汗や心拍数が記録されているのです。

そうすると、たった10枚カードを引いただけで、被験者に次の変化が現れます。

  • 赤いカードを引くときに手に汗をかき、心拍数が上がっている。つまりストレスを感じている。
  • 赤いカードよりも青いカードを選びやすいという行動の変化がみられる。

このことから、人が意識的に何かを理解して行動するよりもずっと早く、直感や感情のレベルで人は何かを理解し、それに基づいて行動しているということがわかります。

つまり、「感情には重要な情報が含まれている」のです。

他にも次のような例があります。

感情感情に含まれている情報
誰かに怒りを感じる自分が公平に扱われていない。自分の群れの中の地位が脅威にさらされている。
孤独を感じる生き残るためには、群れに属する努力が必要。
不安を感じる何かを決断するには情報が不足している。誰かのサポートが必要。

感情を認識することにより、自分の置かれた状況をより早く理解することができるのです。

視点をシフトできる

私たちは、よく、「私は怒っている」「私は悲しい」「私は嬉しい」という言い方をします。まるで、私の存在自体が怒り、悲しみ、喜びであるような言い方です。

ところが、マインドフルネスの実践を続けていくと、私自身が怒りというわけではなくて、私は、怒りという感情を体で感じているだけだ、ということに気が付きます。

つまり、自分の視点を

「私は怒っている」から

「私は怒りを体で感じている」にシフトできるのです。

これは些細な違いのように見えますが、このように自分の視点をシフトすることによって、自分の感情と距離を置いて、行動の選択肢や自由度を広げることができるのです。

もし、「私は怒っている」「私自身が怒りである」という言い方をしてしまうと、自分には対処できない、誰かに誤ってもらわないと収まりがつかないという感じがします。

「私は怒りを体で感じている」という風に言えれば、どうでしょう? 激しい運動で肩を痛めた時のように、自分の怒りに対して何らかの対処ができる気がします。

まとめ

自己認識とは、自分の内面、特に思考や感情を理解するということです。

マインドフルネスの実践が自己認識を深める役に立ちます。

自己認識の中でも、特に感情を認識することは、自己をコントロールし、自分の置かれた状況を理解するのに役に立ちます。

Google で開発された人材育成プログラム SIY(サーチ・インサイドユアセルフ)は、

  • エモーショナル・インテリジェンスによる理論
  • 脳科学による裏付け
  • マインドフルネスによる実践

に基づいて、参加者のエモーショナル・インテリジェンスの5つの要素を育成します。

  • 自己認識
  • 自己管理
  • モチベーション
  • 共感力
  • リーダーシップ

これによって、個人レベル、および組織レベルのリーダーシップ・生産性・幸福を向上します。

SIY の企業での導入に関しては、まず、1時間程度の無料のパイロットプログラムをお試しください。詳細は下のリンクをご参照下さい。

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この記事を書いた人
しげき

1963年生まれ。大阪市出身。京都大学法学部卒。KDDIやマイクロソフトなど、30年以上、IT業界で営業・マーケティングを担当した。
2007年からマインドフルネス瞑想を継続して実践する。
2018年にセミリタイアし、マインドフルネスの講師となる。MBSR認定講師。SIY認定講師。

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