この記事では、SIY (サーチ・インサイド・プログラム)で学ぶ、自分への思いやり(セルフ・コンパッション)に関して、その有効性を検証するための脳科学の実験をご紹介します。
継続するネガティブな感情への対処として、「最終的に受容する」という方法がありますが、容易なことではありません。
SIY では、ネガティブな感情を受容するための有効な方法として、自分への思いやり(セルフ・コンパッション)を学びます。
この記事は、継続するネガティブな感情に対して対処しようとする人にとって、有益な情報です。
自分への思いやり(セルフコンパッション)とは?
他の人に優しくしてあげるように自分に対して思いやりの気持ちを持つことをを「セルフコンパッション」といいます。
クリスティン・ネフ博士によると、セルフコンパッションを通じてモチベーションを向上し、心の健康を保つことができるそうです。詳細は、下のリンクをご参照ください。
でも、自分への思いやりの気持ちをもつことで、現状に満足してしまって、向上心を持たなくなってしまうのではないか、という疑問を持っていました。
このことについて実験で調べた人がいます。以下、アメリカのブライネス博士による研究を紹介します。1)Self-Compassion Increases Self-Improvement Motivation
実験の内容
アメリカの大学生68人が実験に参加しました。
参加者は、この実験は、「人は自分の弱みをどのように理解するか」を調べるためのものである、と説明を受けます。
各参加者は、まず、「自分がいやだと思っている自分の弱みや弱点」を書き出します。
その後、参加者は、ランダムに3つのグループに分けられます。
- セルフコンパッショングループ
- 3分間、自分の弱みに関して文章を書きます。
- 自分の弱みについて、優しく理解してあげようという気持ちを持って書くように指示されます。
- 比較グループ1(自尊心グループ)
- 同じく、3分間、自分の弱みについて、自分の強みを肯定する観点から書いてみるように指示されます。
- 比較グループ2(なにもしないグループ)
- 特になにも書く指示をうけません。
次に、各参加者は次の内容で文章を書くように指示を受けます。
- 自分の弱みを変えるための行動を取ったことがあるか
- 自分の弱みは何に由来するのか
この書かれた内容から、参加者がどの程度弱みは変えることができると思っているか、あるいは、変えられないと思っているかを検証し、数値化します。
実験の結果
セルフ・コンパッションを鍛えたグループは、自尊心を鍛えたグループやなにもしなかったグループと比べて、自分の弱みを変えることができるとより強く信じていました。
他にも3つの実験を個別に行い、セルフ・コンパッションを鍛えると、自尊心を鍛える場合と比べて、次の点で効果があることがわかりました。
- 自分の弱みを変えることができると信じる(マインドセット)
- 悪い行いを改め、繰り返さないようにしようと思う(モチベーション)
- 失敗したあとに、改善するための行動を取る(改善行動)
- 自分よりも優れた人から学ぼうとする
このことから、セルフ・コンパッションは、自分の弱点を改善しようという向上心につながるだけでなく、実際に行動を起こす効果を持つ、と研究者は結論づけています。
セルフ・コンパッションが自尊心よりも効果があったのはなぜでしょうか?
研究者によると、セルフ・コンパッションも自尊心も、自己批判を和らげる効果があるということでは同じですが、セルフ・コンパッションはより客観的に自分を評価することができて、自分の価値を必要以上に膨らませる必要がないからだ、としています。
この実験から思うこと
私はセルフコンパッションの話を初めて聞いたとき、しばらくその意味がわかりませんでした。自分に対して優しい気持ちを持つなんて、どういうことなのか、理解できなかったのです。そのような教育を受けていなかったからかもしれません。
ご紹介した論文の中で研究者は、セルフコンパッションを教育現場で活用するべきだと言及しています。

でも、自尊心を高める教育と比べると、セルフコンパッションを高めるような教育って、難しそうですね。
まず、他の人に優しくすることを通じて「優しくすること」を学ぶ必要がありますし、自分のことを客観的に観察することを通じて、「自分に」優しくするという意味を学ぶ必要があります。
大人がセルフ・コンパッションを鍛えるためには、慈悲の瞑想とマインドフルネス瞑想の両方を組み合わせるのがよい、と思います。
SIY (サーチ・インサイド・ユアセルフ)では、ネガティブな感情を受容する方法としてセルフ・コンパッションが取り入れられています。ジャーナリングを使ってセルフコンパッションを実習します。今回ご紹介した実験でも、セルフ・コンパッションを鍛える方法としてジャーナリングが使用されていました。
Google で開発された人材育成プログラム SIY(サーチ・インサイドユアセルフ)は、
- エモーショナル・インテリジェンスによる理論
- 脳科学による裏付け
- マインドフルネスによる実践
に基づいて、参加者のエモーショナル・インテリジェンスの5つの要素を育成します。
- 自己認識
- 自己管理
- モチベーション
- 共感力
- リーダーシップ
これによって、個人レベル、および組織レベルのリーダーシップ・生産性・幸福を向上します。
SIY の企業での導入に関しては、まず、1時間程度の無料のパイロットプログラムをお試しください。詳細は下のリンクをご参照下さい。
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