マインドフルネスで優しい人になれるか?

マインドフルネスで優しい人になれるか

マインドフルネスを練習することで、他人に対して優しくなれるでしょうか?

慈悲の瞑想のように、他人への優しい気持ちを呼び起こすような瞑想は、確かにそのような効果があるでしょうが、「今、ここ」に注意を向けるマインドフルネス瞑想だけでも、他人に優しくなれるでしょうか?

アメリカで、最近、この件についての研究が行われました。以下、ご紹介します。

実験の内容

アメリカ国立衛生研究所のサイトに掲載された論文によると、次のような実験を行ったとのことです。

まず、ランダムに選ばれた参加者を2つのグループに分けて、最初のグループには簡単なマインドフルネスのトレーニングを実施します。このマインドフルネスのトレーニングでは、今、ここで感じている感覚、たとえば、呼吸、考え、感情、体の感覚などに注意を向けます。もう一つのグループには、人生のゴールについて注意を向けるトレーニングを実施します。

次に、実験の参加者に、「サイバーボール」というオンラインゲームを他の人がプレーしているのを見てもらいます。3人の色分けされたプレーヤーが、画面上でボールを投げたり受け取ったりしています。途中から、3人のうちの一人だけ、ボールを投げてもらえなくなります。実は実験の参加者が見ているゲームは、実際の人がプレーしているのではなくて、わざと一人だけのけ者になるようにコンピューターでプログラムされたものです。

この後、実験の参加者は、ゲームの各プレーヤーに電子メールでメッセージを送るように依頼されます。

このメッセージのうち、のけ者にされたプレーヤーへのメッセージの内容について、優しさの観点で評価されます。これが1つ目の優しさの指標となります。

実験の参加者は、次に、このゲーム「サイバーボール」にプレーヤーとして参加します。このときに、さっきのけ者にされたプレーヤーにどれだけボールをパスするかを、2つ目の優しさの指標として計測されます。

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この実験の結果、マインドフルネスのトレーニングを受けた実験の参加者は、単に注意力を高めるトレーニングを受けた参加者よりも、のけ者にされたプレーヤーに対して、より共感を感じていることがわかりました。つまり、より優しい気持ちや同情を感じていました。

なぜ、マインドフルネスが人を優しくする、つまり、より社会性のある行動を取らせるのでしょうか?

この実験の結果は、単に注意力を強化して他人の苦しみに気づくだけでは、人に優しい行動を起こさせるのには不十分であることを示しています。

この研究では、様々な条件で同じ実験を繰り返し、その原因を調べています。

たとえば、マインドフルネスのトレーニングを受けたグループと、筋肉のリラクゼーションのトレーニングを受けたグループを比較して、やはり、マインドフルネスのトレーニングを受けたグループの方が優しいという結果を得ました。マインドフルネスでリラックスするから人に優しくなるというわけではありません。

他にも、ひどいことをする人への怒りが、優しい気持ちの原因になっているか確認しています。そういうことでもありませんでした。

実験の結論

この実験を行った研究者の結論は、次のとおりです。

「人は、通常、自分の利益に焦点を当てて行動するが、マインドフルネスの訓練により、一時的に自分への焦点が外れて、他の人に焦点を当てるようになる。」

マインドフルネスで「今、ここ」で起こっていることに注意を向けることによって、自分中心のものの見方から、自分を切り離したものの見方に、少しでも移行していくということですね。

その他の研究

この実験の他にも、同じようなマインドフルネスと優しさに関する研究が行われています。

ある研究では、マインドフルな人は、自分のイメージを守るためのゴール、たとえば、他の人から認められたり、自分の弱さを隠したりすることには、あまり注意を払わない、という結果が得られています。

また、もう一つ別の研究では、瞑想を長く実践してきた人は、人が苦しんでいるビデオを見たときに、優しい気持ちを持ちやすいだけではなくて、嫌悪や軽蔑といったネガティブな感情も持ちにくいそうです。

たとえば、イラク人を殺したことを自慢しているアメリカ人兵士や、犯罪者に対しても、優しい気持ちを持つことができる、とのことです。

また、2015年に行われた別の研究では、3週間の間、瞑想用のアプリを使って瞑想を行った人は、脳トレーニングのアプリを3週間使った人よりも、松葉杖をついて待合室に入ってきた人に席を譲る傾向があることがわかっています。

更に別の研究では、短い期間のマインドフルネスのトレーニングであっても、人種や年齢による偏見を減少させることがわかっています。

もう一つ別の調査では、瞑想のトレーニングを行うと自分が優しくなり、他人への共感が持てるようになったと感じやすくなるそうです。また、実際に優しい行動をとる傾向がある、とのことです。

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まとめ

マインドフルネスは優しい気持ちを育てる、ということが科学的に証明されつつあります。

人間は、進化の歴史の中で、自分の子孫を残すため、他人を傷つけたり、他の部族と戦争をしたり、ということを繰り返して来ました。私はそうやって生き残った人間の子孫なので、私の遺伝子にも攻撃的な本性が備わっています。その本性が時々、ぬっと、表に出てきます。

マインドフルネスの練習を続けて、他者に対する優しい気持ちを強化したいものです。


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