ここでは、マインドフルネスの実践方法の一つとしての「泳ぐ瞑想」について、私のやり方をご紹介します。
なぜ泳ぐ瞑想をやりたいか
マインドフルネス瞑想には、「座る瞑想」、「食べる瞑想」、「歩く瞑想」などがありますが、「泳ぐ瞑想」もあっていいのではないか、と思います。
私は、水泳が好きで、週に3-4回、プールで45分間程度、泳ぎます。
水泳は、次の理由から、瞑想に向いているのではないか、と思います。
- 同じ動作の繰り返しである
- 動作を通じて体の感覚を感じることができる
- 特に長距離水泳をするとき、他に何もやることがなく、ぼんやりといろいろなことを考えていることが多い
ところが、長い間、どうしても泳ぐ瞑想がうまく行きませんでした。
泳ぐ瞑想が難しい理由
視覚の影響
クロールで泳いでいる時、ほとんどの時間はプールの底の模様やラインを見ていますが、息継ぎをしたり、ターンをしたりするたびに隣のコースの様子やプールサイドの様子が一瞬、視界に入ります。

この時にいろいろな雑念が巻き起こります。特に人の様子が目にはいると、顕著です。
隣のコースの人は私よりも早いか遅いかとか、プールサイドで歩いている人は何をしようとしているのか等、一瞬の間にいろいろなことが頭の中に浮かんできます。
泳ぐ瞑想が難しい一つの理由は、このように、視界に何か入る度に、雑念が沸き起こることだと思います。走る瞑想が難しいのと同じ理由です。
水泳は、歩く瞑想と違って、簡単に止まる、ということができないので、雑念が去るのを立ち止まってじっと待つこともできません。
身体をゆっくり動かすことが難しい
歩く瞑想やマインドフルネスヨガでは、ゆっくりと身体を動かすことでその感覚を観察することができます。
ところが、水泳、特にクロールで泳いでいる時は、ある程度のスピードで泳がないと身体が沈んできますし、息継ぎがうまくできません。
泳ぐ瞑想をするときに、身体の感覚を観察しようと思っても、そういう事情でなかなかうまくいきません。
体の感覚を観察するまえに、呼吸の観察をして心を落ち着ける必要があります。
呼吸の観察がお腹でできない
ところが、この呼吸の観察も、場所によっては、難しいのです。
私は、座る瞑想をしている時には、呼吸をお腹の筋肉の収縮で観察するようにしています。ところが、泳ぐときには、これが難しいです。胸やお腹の筋肉は泳ぐための運動に使われているからだと思います。
クロールで泳いでいる時は、水中で鼻の穴からブクブクと呼吸をはいて、直後の息継ぎの一瞬で口から息を吸い込みます。
この鼻の穴からブクブク息を吐いている時が、クロールで泳いでいる時に呼吸を観察するよい機会です。こんな感じです。
- ブクブクの直前: これからブクブク息をはくぞ、という意識を持つ
- ブクブクの最中: ブクブクの感覚を細かく観察する

私の泳ぐ瞑想のやり方
試行錯誤の結果、今は次のやり方で泳ぐ瞑想をやっています。
- まず、水泳の前に、肩や腰、膝をマインドフルにゆっくり動かして身体の調子を観察します。特に肩をよく回しておきます。もし、調子が悪いようなら、水中歩行に切り替えます。調子が良ければ、まず、ケノビの練習を往復(50メートル)やります。
- 最初は肩をならすために、少しゆっくりと泳ぎ、徐々に肩の調子を見ながら、巡行速度にスピードを上げていきます。途中で肩が少しでも痛くなってきたら、すぐに中止します。
- ターンしてプールの壁を蹴って、ケノビをしている間に、瞑想をする意志を確認します。瞑想をしていることを忘れていたら、ターンを合図に思い出します。
- 泳ぎ始めて最初の10分は、呼吸に意識を集中します。鼻からブクブクと息を吐く直前にこれから息を吐くことを意識します。さらに、息を吐きながら鼻の感覚を観察します。
- 呼吸で顔を上げるときやターンの時には、できるだけプールサイドを見ないようにします。
- 雑念が起こったことに気が付いたら、そのような雑念があることを素直に認めて、次の呼吸で「今、ここ」に戻ります。
- 観察の対象は、10分おきに変えていきます。45分間の長距離水泳をするときには、次のようにします。
- 最初の10分: 呼吸(鼻の穴からのブクブク)
- 次の10分: 身体の感覚(肩の調子、皮膚の水流や筋肉の動き)
- 次の10分: 音(ピチャピチャ、ゴーゴーという水の音)
- 次の10分: 思考や感情の動き
- 最後の5分: 何も選択しない瞑想(観察の対象を選ばず、意識に上るものすべて観察する)
まとめ
私の場合、鼻からブクブクと息を吐く前に、「これからブクブクと吐くぞ」ということを意識することで、泳ぐ瞑想のきっかけをつかむことができました。
この泳ぐ瞑想の練習をすると、一瞬の間に、とてもたくさんの雑念が沸き起こっていることに気が付きます。