Lucy Hone 博士は、逆境にある人の回復力(レジリエンス)についての研究者ですが、ある日突然、自分自身が研究の対象になったことに気が付きました。愛する娘が交通事故で亡くなったのです。
娘を突然なくしたことで世界は突然暗転し、毎日生きていくのも辛くなりました。自分自身がカウンセラーの助けを必要としていました。カウンセラーは、離婚や精神疾患のリスクがあること、悲しみの5つの段階(否認、怒り、取引、抑うつ、受容)や、回復するのに5年かかることなどを教えてくれましたが、これが自分の役に立つとは思えませんでした。
もっと、希望を持てるようなアプローチが必要だと感じたのです。
そこで、それまでの自身の研究をもとに、逆境からの回復力が高い人がやっている3つの戦略を自分でもやってみることにしました。
博士自身、この3つの戦略を使って、辛い状況から回復することができたそうです。
戦略1 辛いことは誰にでも起こること、人生の一部分であることを知る。
辛いことが起こった時は「なぜ私だけが?」と思いがちですが、誰にでもいずれは辛いことが起こります。辛い気持ちを感じることは人生の一部です。
私たちは、ソーシャルメディアなどで幸せな他人を見たり、幸せな自分を発信したりしていますが、現実は、辛いことが必ず起こります。
回復力の強い人は、このことをよく理解しています。
戦略2 意識を向ける先をコントロールする。
私達には、一般的に、ポジティブなことよりもネガティブなことに意識が向きやすい、という傾向があります。このことをネガティブバイアスといいます。
悲しみや怒りといったネガティブな感情は、喜びや感謝といったポジティブな感情よりも、ずっと心に残りやすいものです。
ところが、回復力の強い人は、自分が変えることができるものに注意を集中し、自分が変えることが出来ないものは、受け入れようとします。
このスキルは、だれでも、努力により身につけることができるものです。
博士には、亡くなった娘の他に、二人の息子がいます。この二人のために、生き続ける決心をし、それ以後、ポジティブなこと、特に感謝するべきこと意識を集中させるように努力したそうです。
戦略3 今やっていることは自分を助けているか、傷つけているかを問う。
博士は、この質問を常に、自分に投げかけるようにしました。例えば、
「娘の死亡事故を引き起こした運転手の裁判に出席することは、自分を助けるか、あるいは傷つけるか?」
「毎晩、亡くなった娘の写真を見て昔のことを思い出すのは、自分を助けているか、あるいは傷つけているか?」
このように自分自身に質問を投げかけることによって、意思決定をその時の衝動に任せるのではなく、コントロールすることができます。
マインドフルネスが役に立つ
この話を聞いて、私は、マインドフルネスがとても役に立つのではないか、と思いました。
マインドフルネスとは、「今、ここ」で起こっていることに意識を向けるトレーニングです。
自分の心の中で起こる思考や感情、体の感覚、自分の周りに起こっていることに意識を向け続けます。これにより、さまざまな出来事により、思考や感情が起こる現実を理解し、受け入れます。
終わったことを思い悩み、将来のことを心配するのではなく、「今、ここ」で起こっていることに意識を向け続けます。
また、自分を客観的に見つめることにより、自分に対する優しい気持ちや好奇心を養います。
こういったことが、Lucy Hone 博士のいう3つの戦略を身につけるのに役に立つのではないか、と思います。
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